2007年10月15日月曜日

不可思議なものたち

これまで自分が見た不思議と呼べる物は二つあります。

ひとつは小学生高学年の夏休みのこと、二番前の兄と夕方に外を散歩していた時のことです。金沢の自宅の近くには小さな川が流れていて、居るはずの無い蛍でもいないかと、馬鹿なことを考えて様子を見に外へ出たのでした。ちょうど日が沈んで夕日の残り香が消え、夜になろうとする時でした。

当時の自宅は路地の奥の借家で、自宅の前には大家の畑があって、その脇を小さな川が流れていました。町中の一角ではありますが、小さな川に沿って畑や空き地が続いていて、川向こうには桐畑があって放置された土地は少し荒れていました。

テレビのニュースで見たのか、キッカケは忘れてしまいましたが、居るはずも無い蛍を探して、兄と二人で外に出て川沿いを歩き出しました。その時、二人は白い不思議なものが流れるように川沿いの道を移動して、途中の橋を渡っていくのを見たのです。それは二対の白っぽい影のようなもので、人と同じくらいの高さをすーっと移動して行きました。

兄と私は思わず顔を見合わすと、ぎゃっと声を上げ、自宅へ向かって我れ勝ちに走り返えりました。確かに見えた白い影のようなものは不自然な自然さで移動して行き、間違いなく川を渡って行ったのでした。それが何だったのかよく分りませんが、子ども二人が顔を見合わせて大急ぎで逃げ出させる不可思議な情景だったことは間違いありません。

これが友達と「怖い物話」をする時の第一番の話なのです。がっかりした人には申し訳ありません。漠として不確かな話で今でも真相は分らないのですから。

そしてもう一つが狸囃子です。これはもう間違いようもなく詩の情景のように、向かいの山の中腹に明かりがチラチアラしている様子を賑やかな音楽と一緒に自分がこの目で見たのでした。

それでは、終わってしまった自分の小さい子どもの頃の夏休みを思い出しながら読んでみてください。でも、これは本当にあった不思議な話ですから。



狸囃子     beebee


小学生の時、
夏休みにはいつも
母の実家に帰って、
おばあちゃんのおとぎ話を聞いた。
従兄弟達と一緒に横になって
おきまりの昔話を聞いた。
遠くに盆踊りの音楽が聞えてきた。
狸囃子や、と従兄弟の兄ちゃんが叫んだ。
みんなで母屋の前の道に出た。
向かい山のあたりで灯りがチラチラと揺れていた。
賑やかな太鼓囃子と盆踊りの音楽が聞えてきた。
ほんまやねぇ、と同い年の従兄弟の子が言った。
なにぃ、と言うと、
向かい山には村は無いと言う。
あれは空気の屈折や。
いっちゃん大きい兄ちゃんが言った。
灯りは見えるけど蜃気楼だと言う。
すぐそこの手が届きそうな近くの山に、
確かな賑わいを感じながら、
ぼくたちはずっと立って見ていた。


@人気blogランキング@ ← クリックよろしく

0 件のコメント: